1月13日に「2020 ニコニコ耐久選手権」が開幕した。
2020シーズンは再びポルシェワークスとしてLMGTE ProクラスにPDB・しーなありさの布陣で挑むこととなり、この組み合わせは2018シーズンぶりである。
今シーズンのLMGTE Proクラスはアストンマーティン、BMW、フェラーリそしてポルシェの4メーカーによる戦いとなっており、どのチームもハイレベルなドライバーを集めておりどのシーズンよりも接戦が予想されることとなるだろう。
今回第1戦の舞台となったのはブラジル、インテルラゴス。
ポルシェチームにとっては1番有利に戦えるコースであり優勝を収める大きなチャンスとなる1戦だ。
予選ではアストンマーティンの2台が抜きん出た速さを見せフロントローを独占。3番手にはBMWの81号車が食い込みポルシェは92号車PDBが4番手、91号車しーなは5番手スタートとなった。
レースがスタートし2時間先のゴールへと走り出したが、ターン4でLMP2クラスのスピンにBMWが巻き込まれる形でクラッシュ。ポルシェの2台も危うく巻き込まれそうになったが間一髪で回避し難を逃れる。しかしクラッシュした2台のダメージが深刻でFCYが発令される。
1周目と言うこともあって特に大きな動きはなかったが、グリーンフラッグと同時に91号車が左リアタイヤを芝に落としてしまいスピン。
これにより92号車がアストンマーティン2台を相手にすることになり不利な展開となってしまった。
91号車は大きく順位を落としたがそこから怒涛の追い上げを見せ、一時クラス6位まで落ちてしまった順位を4位まで挽回し、トップ集団の後ろまで戻ってきた。
そしてレースが動いたのは13周目。先に動きを見せたのはポルシェだった。
13周目に92号車のPDBがピットに向かうと翌周には91号車しーながピットに入り92号車が5番手、91号車が7番手でピットアウトすると15周目にアストンマーティン95号車、フェラーリの2台、BMWの82号車がピットに飛び込む。続く16周目にトップを走っていたアストンマーティン97号車とBMW81号車がピットに入りLMGTE Proクラスは全車ピット作業を終えた。
この時点でアストンマーティンの2台が1-2体制を作りレースを支配するような形で進んでいて2秒後ろを続くのがポルシェの92号車PDBと91号車しーなとなった。
その後しばらくしてポルシェチームは92号車と91号車の順位を入れ替える作戦に出た。
91号車と92号車で違う作戦を取っていたためペースの速い91号車を前に出しアストンマーティンを追わせる作戦に切り替えることにし前後の入れ替えを行った。この作戦は当たりだったようで2秒空いていた差は最終的に1.4秒まで詰めることが出来たが、先に91号車の燃料が尽きてしまいピットインを余儀なくされる。作業を終えて出てきたのはBMW81号車の真後ろだった。
27周目。アストンマーティンが動く。2番手を走行中だった95号車がジョーカーピットを行ったのだ。2分間ピットで静止したのちに作業を開始するジョーカーピットは順位を大きく落とすことになるので消化するタイミングが重要だ。アストンマーティンはレースペースも良く後半に向けての巻き返しも可能と判断したために早めの消化を行ったと思われる。
その間に91号車はタイヤも温まり切ってない状態でのバトルとなり28周目の1コーナーのブレーキングで91号車がBMWをオーバーテイクする。しかし4コーナーでブレーキングが遅れたBMWに追突されリアにダメージを負ってしまう。これにより大きくペースを落とすこととなった。そして同じ28周目にポルシェ92号車とアストンマーティン97号車がピットイン。97号車は95号車に続いてジョーカーピットを消化する。92号車はジョーカーピットを行わずピットアウト。91号車の後ろに戻る。
先程のダメージによりペースの上がらない91号車は92号車より1秒遅いタイムでの走行となったため、チームは順位を入れ替える判断をし92号車を先行させアストンマーチンとのギャップを広げられるようにプッシュを始める。
91号車は35周目にピットイン。ダメージ修復に少し時間が掛かって81号車の後ろでピットアウト。その前にはジョーカーピットで周回遅れになっていたアストンマーチンの2台が走っていた。
36周目に前を走っていたアストンマーティン95号車がコースアウトしバランスを崩したことでパス。続く37周目に97号車の前に出て81号車を追う展開になったが、BMWのペースが速くついて行くが少しずつ差をつけられていった。
ここでアストンマーティンの前に出ていた91号車はペースを落としアストンマーティンの2台を抑え込む動きを取り92号車のアシストを行う。
42周目にジョーカーピットを消化するため92号車がピットイン。頭を押さえられているアストンマーティン2台の後ろに戻ると43周目に95号車、45周目に97号車がピットイン。91号車のアシストと92号車のプッシュにより見事にアストンマーティンの前に戻ることに成功。事実上のクラストップの座を奪う。
しかし46周目に97号車が1コーナー前のホームストレートで92号車をオーバーテイク。これに92号車も食い下がり何度も横に並ぶがレースの大半を支配したアストンマーティンが先行を許すことはなく97号車との差は広がっていく。そして97号車とバトルをしている間に95号車がファステストタイムを叩き出し約2秒の差を1周でコンマ2秒まで詰めてくる驚異的なペースで92号車に襲い掛かる。その速さはあまりにも無慈悲で47周目のターン4で為す術もなく抜かれてしまう。
一方の91号車しーなはトップを走行し続け48周目にジョーカーピットを消化するためピットイン。2分間の静止後フェラーリ51号車の後ろ7番手でピットを後にする。
55周目にBMW81号車がジョーカーピットを消化して6位でピットアウトしGTEクラスは全車ジョーカーピットを終え最後の戦いに向けて走り始めた。
56周目にアストンマーティンの2台がピットイン。その関係で92号車がトップに出る。その2周後に92号車もピットイン。この時点で最後まで持たないと判断したポルシェチームは2台ともペースを上げ始める。92号車は91号車の後ろに戻り先にピットに入ったアストンマーティンにアンダーカットを許してしまう。この時点で2番手を行く95号車と92号車の差は6.5秒。レース終盤にこの差は絶望的だった。
しかしプッシュをしていたポルシェチームに微かに希望の光が見え始める。
プッシュする92号車とは対照的にアストンマーティンチームは燃料を気にしてペースを落とし始めたのだ。これにより先程まであったギャップはみるみると縮まっていく。これにより6.5秒あった差が70周目には3.8秒まで縮まっていた。
僅かではあるが勝利が見えてきた71周目のホームストレートで燃料が厳しいアストンマーティンは周回遅れとなっていたフェラーリ71号車を前に行かせたのだ。しかしこの判断はアストンマーティンチームの勝利の歯車を狂わせる。
72周目のターン1で前に行かせた71号車に詰まってしまい、同士討ち寸前の状態になってしまう。その間に92号車は差をさらに詰め後方1.2秒まで差を縮め射程圏内に捉える。さらにその後のターン4から11までの間でLMP2クラスが追い付きオーバーテイクしていく中でアストンマーティンの2台は大きくタイムロスしてしまい73周目にはコンマ5秒しか差はなくなっていた。しかし前を行く95号車がその行く手を阻む。巧みなブロックで先行する97号車を逃す。
が、ここで予想外の事態が起きてしまう。
ターン4の出口で1番手を走行していた97号車が大きく膨らんでしまいバランスを崩してしまった。
さらに運の悪いことに97号車が戻ってきたのは95号車の前だった。緊急回避のためにブレーキを踏まされた95号車。この隙をPDBは逃さなかった。アウト側に並びかけ続くターン5に3台並んだ状態で進入していきイン側を取ったPDBが2台を同時にオーバーテイクしトップを奪取。レースが残り2分での出来事だった。
その後は勢いに乗った92号車PDBが逃げ切りクラス優勝を成し遂げた。
92号車のアシストに徹した91号車しーなはクラス5位でのフィニッシュとなりマニファクチャラーズランキング1位でのシーズンスタートとなった。
ドライバーズコメント
91号車:しーなありさ
「ポルシェチームの勝利に貢献できて嬉しく思う。レース中にいくつかのミスとアクシデントがあったけど、チームとして仕事をこなせたことやレース中に諦めなかったことが今回の結果に繋がった。アストンマーティンの速さは確かなもので今シーズンを通して苦しむことになるだろう。次戦以降も気が抜けない展開が続くと思うので僕たちも強くなって次戦を迎えたい。」
92号車:PDB
「まずはポディウムの真ん中に戻ってこれたことを嬉しく思う。予選後には誰も僕が勝つと思ってなかっただろう。予選で1秒のギャップがあった。週末を通して、黄色い車は僕らよりも良い仕事をしていた。しかし、レース中の小さな努力が集まって前に出ることができた。チームメイトのしーなも勝利に協力してくれた。僕の勝利ではなくチームみんなで掴んだ勝利だ。」
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